東京2025デフリンピックで東京都鍼灸師会が「はりケアステーション」を開設
2026.01.08
昨秋開催された『第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025』にて、昨年11月20日~25日の6日間、東京都鍼灸師会が中心となり「はりケアステーション」にて鍼体験を実施。延べ856名のアスリートや関係者に鍼を行った。
多くの鍼灸師の協力のもと国際大会・デフリンピックでの出展を実現
発端は東京都鍼灸師会と関わりのある都議会議員より「デフリンピックで鍼灸普及活動をしてみては?」と同会会長の小林潤一郎氏に打診があったことから。同会では長くマラソンボランティアに力を入れてきた経緯があり、地元で開催される国際大会とあって「まさに好機!」と出展に向け行動を開始した。
「初めて出展する大会なので、予想の立たないことが多かった」と、当日までの苦労や困難を話すのは運営委員会の野村森太郎氏。まず大変だったのは人材面だった。今回、「一日あたり一定人数以上の『役務』を提供することが必須」という規定のもとの出展となり、曜日に関係なく毎日安定して人材を確保することが必要になった。
さらに大規模な国際大会で、訪れる人の様子も流れも読めない会場でのオペレーションを組むのも難しかったそう。「SNSや同会のホームページで参加を呼びかけたけれど、人集めは難航した。1日だけの予定だったところを『明日も数時間でもよければ』と言ってくれたり、『人が足りない所に』と予定を調整してくれたりと、心配りや善意の連鎖のお陰で救われた」と野村氏。結果的に60名のボランティアが参加した。
資金集めにはクラウドファンディングも行った。「CAMPFIRE」を利用したのだが、当初は「デフリンピック」の名称使用の可否が確定できなかったため、画像や解説を工夫。SNSも活用して協力を呼びかけた。その結果、目標金額の10万円を大きく上回る寄付が集まり、ブースの設営や備品の購入、人件費に充てることができたという。
デフアスリートとどうコミュニケーションをとるか?
デフアスリートとどう接すればいいかというスタッフの不安を解消する必要もあった。そこで、鍼灸師兼手話通訳士の宮原麻衣子氏に頼みオンライン講習会を開催。デフリンピックの歴史と概要、「Deafという文化」についてなどのテーマで実体験も踏まえ解説をしてもらった。
これにより、聴覚障害者の輪の中では聴者がマイノリティだという姿勢を持ち、コミュニケーションにおいては目をしっかりと合わせ「あなたに話している」と態度で示すなど、心構えを学び、いざ対面する時のイメージを膨らませていった。デフカーリング日本代表の松橋早友梨選手による手話講座も開き、参加者はアーカイブで手話も繰り返し練習して実践に備えたそう。
当日、初めてのイベントということで、やはり想定通りとはいかないことが多々あったという。設営した場所は人通りが少ないエリアで、呼び込みがマストになった。他のブースを見学しながら出展者や関係者に声をかけたり、会場スタッフや手話通訳士にも誘導を協力してもらったりし、初日訪れたのは62名。日ごとに口コミやリピーターにより、認知度を高めることができ6日間で856名に体験してもらうことができた。
意思疎通には手話をはじめ、文字起こしアプリ、翻訳アプリ、筆談などを活用。丁寧にコミュニケーションを図ることを第一に、普段の患者さんと同じように「これから何をするのか」を先に理解してもらい施術を始めることを徹底した。受付で名前や国名を聞き、言語サポートが必要かを先に把握し、スムーズに対応できるようにも工夫した。
その結果「丁寧な説明で鍼のイメージが変わった」「手話の対応、嬉しかった。すぐに楽になって助かった」「The staff are very nice and helpful!」(スタッフはとても親切で助けになった)」など、喜びのコメントがたくさん。
ボランティア側では、特に学生にも「臨床の楽しさを感じられるように」という思いがあったという。通常の活動で中心になる「呼び込み」に加え、コミュニケーションのサポートや鍼出しといった臨床の空気に触れられる役割も担ってもらい、「二度とないと思うほど素晴らしい体験ができた。また参加したい」「鍼灸師は素敵な仕事だと思った」「教科書で学べない多くの気付きを得た」など、やりがいを伝える多くの感想を聞くことができた。
経験を鍼灸団体に共有して社会的認知の向上に
同会としては、鍼灸の普及啓発に貢献できたことだけでなく、多くのアンケートが集まったこと、業団に関わったことのない人の会への入会、数日に渡る大きなイベントの運営フローのモデルケースができたことなど、様々な成果があった。
野村氏は「大きなイベントの経験を他県の鍼灸師会にも共有したい。鍼灸や鍼灸師の社会的な認知度を上げるには団体の力も必要。職能団体に加入していない人にイベントを通じて活動を伝え、賛同してくれる人を増やせれば」と語った。
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■公益社団法人東京都鍼灸師会
https://harikyu-tokyo.or.jp/acupuncture/admission
■公益社団法人日本鍼灸師会
https://www.harikyu.or.jp/join/
※東京都鍼灸師会には学生会員や新卒会員という制度、日本鍼灸師会の準会員制度など、会費の割引制度もあり。詳しくは各地の師会に問合わせを。